株式会社大原織物

多くの有名デザイナーの依頼を受けてきた大原織物。大原さんに布を作って欲しくて、何十年と通うデザイナー達がいます。他の織物工場ではなく、なぜ大原さんに頼むのか。取材を通して、それが少しだけわかったような気がしました。

大原さんの観察眼

大原さんが奥からたくさんの布サンプルの山を運んできてくださいました。 驚いてしまうような布が多く、大原さんはこちらの反応を楽しみながら笑みを浮 かべて教えてくださいました。
現在の大原織物さんの原点は、たくさんの工場が集まるファッション協議会にあ り、そこで色々な素材を知って、たくさんの素材や技法を組み合わせて製品をつ くるようになりました。当時、ネクタイの多くがシルク素材でしたが、大原さん は綿やウール、麻のネクタイを作り、これは面白いと思ったのだそうです。お話 を聞くと、素材選びにこだわりがあることがわかります。それぞれの素材の組み 合わせが適切で、妥協がありません。新しいことに対しても抵抗がなく、工場で の経験に限らず思案できるということや、完成した布への自信や愛着も、お話か ら感じられました。

  大原さんはデザイナーさんにデザイン案を渡されると、すぐにデザインに合った サンプルをつくる事が出来るといいます。また、デザインを見て、それはつくっ たことがあよ、こうした方が面白いよ、というような提案をされることも。実際 に仕事について話している様子をみても、提案に対して「今すぐサンプルつくれ るよ」といったスマートな対応をされていて、私の目にはそんな大原さんがかっ こよく映りました。

東京の暮らしに共存する工場

住宅街の中にある大原さんの工場は、東京の暮らしとともにありました。工場に入ると、機械が密集して並び、機械の前に立つとそのすぐ後ろにも機械が。全ての道具や機械にスッと手が伸びるように計算された空間づくりに驚きました。こうした細部に宿る工夫やアイデアが、大原さんの産み出す布にも込められているように思いました。

10 年以上の付き合い

大原さんはお取引先とのお仕事を1 度始めると、10 年以上の付き合いになるそう。価格では勝負しないという大原さん。それでも取引先との長いお付き合いがあるということは、依頼する側の作りたいもの、それ以上のものを大原さんが実現できるからなのではないでしょうか。デザイナーさんと同じような気持ちで仕事に取り組まれていて、デザインに対して他人事ではなく、一緒にものを考えてつくること。依頼を再現するだけでなく、より良いものを作りたいという気持ちを自然と持っている方で、それが大原さんの魅力なのだと感じました。

text:Sena Nakano

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