田口織物工場

八王子駅から西へ少し進んだ場所にある田口織物。創業当初は緑の溢れる田舎町だったそうですが、最近は周りに家も増え住宅街となりました。そのため、織り機を動かすときに出る大きな音で苦情がきてしまうこともあったとか。工場へ入ると事務所があり、そこには今までのお仕事でつくられた数え切れないほどの生地サンプルがずらりと並べられています。

田口織物の特長

工場には、機械式の織機、手織りの織機、糸巻き機、組紐機など、様々な機械が並べられています。その空間はまるでアートギャラリーのよう。八王子は他の産地と比べて土地の所有面積が少ないためか、天井の空間を生かした整理整頓の仕方が印象的でした。

田口さんでつくられる織物は、ウールなどの太い糸の使用と装飾的な表現が特長。織物といえば、フラットな経糸と緯糸で織られたシンプルなものを想像します が、田口さんに見せていただいたものはどれも立体的で、思わず触りたくなるモフモフが散りばめられていたり、織り方を工夫したとてもかわいらしい織物がたくさんありました。/p>

時代で変化するものたち

ファッションを中心とする生地を織ってきた田口織物さん。1960 年の創業から現在に至るまで、様々な変化があったと言います。近年のファッション業界の厳しさから、インテリア製品の生地も織るようになったこと。インターネットの普及で、実物よりも写真の良さが優先されるようになってきたこと。そのため、良いものをつくっても見つけてもらうことが大変になってしまったこと。ファッションの流行を促すような生地を頻繁に生み出さなければならない忙しい時代が終わり、流行に左右されない生地をつくる時代へと変化していきました。

職人さん本人の意図とは関係なく、時代の変化に合わせて自分たちが変わらなければならない現実があることを知りました。

織物産業のこれから

生地の展示会に参加する際、繊維産業の今後について他のメーカーと話すことがあるという田口さん。その度に繊維産業の苦しさを他のメーカーと共有し、打開策を日々考えているそう。

有名なブランドやデザイナーさんの生地を扱っているという話を聞き、大学で染織を学ぶ私たちが想像していたのは、八王子の織物産業の盛んな生産の様子。しかし田口さんは、織物の魅力を話す楽しそう な表情とは一転、時代による産業の変化をお話をされている時は、とても苦い顔をされていました。田口織物さんを訪れて、八王子織物は他の産地と比べ、少ない面積を活かした自由な表現ができるという魅力があることを知りました。大学で染織やデザインを学ぶ私たちがもっと産地や工場のことを知り、発信・連携をしていくことが、産地の継続につながるのではないかと感じました。

text:Yuko Miyachi

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